『ホームレス中学生』part2 (約1800字)

ホームレス中学生

作者:田村裕
出版:幻冬舎

漫才コンビ麒麟の田村君の、中学生の時に公園に一ヶ月ほど住んでいたというホームレス生活を中心とした自伝。
 衆議院議員の麻生太郎氏も推薦している。
 「突然の「解散」が家庭にもあったとは…。お笑いタレントが書いた本に、これほど泣かされるとは…。ここには、日本人として忘れてはならない何かがあります」
 アンパンマンのやなせたかしさんも推薦文を載せている。
 「人々にパンを与えたアンパンマン、ハトからパンを奪った田村くん。どちらの話も、みんなに勇気を与えてくれる」
 本の表紙は段ボールを似せてつくっており、帯には段ボールをかじり、雑草を手にする田村君の写真が載っている。
 大阪の吹田市のマンションに一家四人(既にお母さんは直腸ガンのため田村君が小学五年生の時に亡くなっており、お父さんと、お兄さん、お姉さん、田村君の三人兄弟)で住んでいた田村君一家は、田村君が中学二年の一学期の終業式の日に、自宅マンションから追い出される。
 お父さんの収入が激減し、ローンが払えないため差し押さえになったのだ。
 お父さんは以前は大手製薬会社に勤めていたが、お母さんを看病しているときに、やはりガンとなり、仕事をクビになったのだ。
 お父さんは「ご覧の通り、まことに残念ではございますが、家のほうには入れなくなりました。厳しいとは思いますが、これからは各々頑張って生きて下さい。………解散!」と言い残してどこかに行ってしまう。
 コンビニでバイトしていた京都教育大学生のお兄さんと、受験生のお姉さんは吹田市のいざなぎ神社の公園、田村君は「友達の家に泊めて貰う」と強がりを言って、実は通称「まきふん公園」のカタツムリ型滑り台の中で生活を始めた。
 数日で生活費がなくなり、まずは雑草、次に段ボールを水に濡らして食べてみるが、到底食べられるものではなかった。自動販売機の取り忘れ釣り銭や、ハトのえさのパンの耳を貰ったりして生活していると、子供達が田村くんに気が付き、石を投げて攻撃してくる。
 一ヶ月弱公園生活をしていると、道でクラスメートの川井君に会い、お母さんの好意で、川井君の家に住まわせて貰うことになる。お姉さんも親類の家に引き取られ、お兄さんだけは学校の校舎などで生活を続けた。
 川井君のお母さんなどが費用を出してくれて、兄弟一緒にアパートを借りて住むことになる。生活保護を受けて田村君は普通の中学生活に戻り、バスケ部も続け、お兄さんの薦めもあり吹田高校に進学してからもバスケを続ける。
 そのうち、みんなの前ではおどけてみんなを楽しませていたが、一人になると生きていてもしょうがないという気持ちがもたげてきた。そんなときに田村君を救ったのは、教師として悩んでいた担任の工藤先生の手紙だった。
 田村君は生きる望みを取り戻し、みんなにほめられるような立派な人間となりたいと決意する。
 一時は一日2,000円貰っていた生活費は、300円となり一日一膳だけご飯を家で食べて良いという条件に変わった。
 このときに田村君が「味の向こう側」と呼ぶ、ご飯を一口10分以上噛んでいると味わえる最後の瞬間の味と出会う。兄弟はごはん一膳で二時間以上噛んでいたという。
 田村君が回転寿司屋で皿洗いのバイトを始めて300円生活は半年ほどで一日1,000円に改訂されたが、300円生活は本当に苦しかったという。
 高校ではバスケの顧問の先生に見込まれて生徒会長になった。田村君がしゃべるとみんなが聞いてくれると先生は言ったそうだ。
 田村君の人を惹きつける人なつっこさ、カリスマは高校時代からも傑出していたのだろう。
 その後吉本のNSC(吉本総合芸能学院)に入学し、現在の相方川島君と出会い、麒麟を結成する。
 実はお兄さんも一時NSCに在籍していたが、兄弟二人も生活の安定しない芸人を目指すのは支援してくれた人たちに申し訳ないということで、お兄さんは自分から辞めたのだと田村君は言う。
 いろいろな人の支援、そして天国のお母さんの導きがあって今の芸人生活に入れたので、お母さんへのメッセージでこの本を締めくくっている。
若いとはいえ人生の荒波をくぐってきた人の言葉は重みがある。コミカルに書いてはいるが、ウルウルしてしまうところも多い。
 ベストセラーになるべくしてなった感動の自伝だ。
 簡単に読めるし、どこの本屋でも置いているはずなので、是非手にとってめくって欲しい本である。

引用元:[あらすじ検索サイト あたまにスッと入るあらすじ]
本の詳細:[書籍詳細: ホームレス中学生]

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