『カラフル』part5 (約1100字)

カラフル(文春文庫) メディア化作品(映画)

作者:森 絵都
出版:文春文庫

 

今年も夏休みの課題図書を探しに学校の図書室に行ってみた。大半は既に借りられていて残り1冊しかなかった。タイトルは、「ぼくの羊をさがして」。タイトルを見た時も、初めて読んだ時も、「羊」が何を意味するのかさえわからなかった。
犬が羊を探して放浪の旅をする話なのだと思った。が、感想文を書くにあたり、何度も読みこむうち、「羊」が何かの意味を持つと気付いた。
「羊」とは何か。それがわかるまで長い時間を必要とした。何度も読書感想文をあきらめようかと考えた。けれど、私は夏休みの課題として1年生からずっと読書感想文を書く事を目標の1つとしてきた。なのに小学校最後の年になって、その目標を達成せずに夏休みを終える事は、やはり自分が許せなかった。
「羊」とは何か。自分なりの答えを求めて何度も読み、読んでは投げ出したい気持ちとの闘いだった。何度目だっただろう。ようやく「羊」の意味が分かり始めてきたのは。「羊」とは、生きる目的のシンボルではないか。それが私の出した解釈だ。いつの間にか私も自分なりの「羊」を探していたのかもしれない。
「一番大事な事は、自分の一生は役に立った、と最後に思える事だ。自分なりに考え、努力をし、世の中を少しは住みよい場所にしたと思える事だよ。」これはおじいさんが犬のジャックに対して言った言葉だ。この言葉に私は強く心を動かされた。
私は将来やりたい仕事がある。その仕事は決して世界を動かすような大きな仕事ではない。けれど、人を楽しませ、元気づける事の出来る仕事だと思う。ほんの少しだけど人の役に立てるかもしれない。そう考えた時、おじいさんの言葉が少しだけ理解出来た気がした。
私はまだ11年しか生きていない。長い年月に沢山の経験をしてきたおじいさんとは比べ物にならない程少しの経験しかしていない。「あなたの生きる目的は何?」と聞かれても「わからない」と答えるしかない程だ。
「生きる目的」。ジャックにとってのそれが牧羊犬として羊を追う仕事をする事だとはっきり自覚できたのは、子犬の時に牧場から出され、ペットとして、あるいはサーカスの芸をする犬としての経験をしたからではないだろうか。けれど、その経験だけでは、はっきりと自覚する事は難しかったはずだ。
ジャックは牧場を出されるまで犬の家族から大切なものをもらっていたのだ。
だからこそ生きる目的が明確になったのだと私は考える。
私に今必要なのは、おじいさんの言葉を借りれば「沢山の愛情と希望」だ。幸い私にはそれを与えてくれる家族がある。生きる目的を見失わないように、今は家族から沢山の愛情をもらおう。そうすれば多くの経験をする中で生きる目的が明確になるはずだ。

 

引用元:[NPO法人宮崎自殺防止センターを応援したい]
本の詳細:[カラフル]

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