『カラフル』part7 (約1800字)

カラフル(文春文庫) メディア化作品(映画)

作者:森 絵都
出版:文春文庫

「あなたはあの世界にいなければならない」
反抗期。周囲の人やものをやたらと傷つける時期。しかしそれ以上に、そんな自分に傷つく時期。
反抗期だった頃の私は、まず自分を取り巻く「世界」が嫌いだった。逃げ出したいのに逃げ出せない、私の周りの「世界」は私を苦しめた。そして私は、自分自身も大嫌いだった。だから「私はなぜ生きているのだろう。」と自問しては、生きることがつらくなっていた。
だがそんな時、ある小説の一文が私を救ってくれた。その一文こそ、冒頭の引用文である。
小説の題名は、『カラフル』。
主人公は服薬自殺を図った少年、真。彼はいじめに遭ってから人間関係が上手くいかなくなり、自分の世界に閉じ籠もるようになってしまった。
生きることよりも死ぬことを考えるほうがずっと楽だったし、
生よりも死のほうが魅力的に思えた。
いつしかこう考えるようになった真は、自分の命を絶とうとする。が失敗し、サポート役となる天使のプラプラと共に、生きていくことに「再挑戦」することとなる。
私は真と自分を重ねるようにして読み進めていった。そして真とプラプラは、私に二つの大切な事を伝えてくれた。
一つ目は「見方を変えれば『世界』も変わる。」ということだ。再挑戦をする前の真は、友達が一人もいなかった。なぜならいじめにより人を恐れるようになっていたからだ。しかし真は再挑戦で、人に対する「怖い」という見方を、少しずつ変えていった。すると彼に一人の友達ができた。真が見方を変えてみたことで彼の周りの「世界」は明らかに表情を変えたのだった。
私はこの時、「私の嫌いなこの『世界』も見方を変えれば、私の好きな『世界』へ変えられるのではないか」と思った。私には「世界」=「苦」という固定観念のようなものがあった。それがある限り、私の「世界」の良い所など、見えてくるはずがない。
たった一色だと思っていたものがよく見るとじつにいろんな 色を秘めていた
まさにその通りだと思う。私は「世界」の全てを苦しみだと思っていたがよく見れば、喜びも怒りも哀しみも楽しさも、「世界」は様々な要素を含んでいた。少しだけ前向きに見ることで私の「世界」の表情も変えることができた。
二つ目は「人は誰かに求められているから生きる」ということだ。真は再挑戦を通して、家族は真が生きていることをとても喜んでいるということに気がついた。そして同時に自殺を図ったことを後悔した。
私は「なぜ生きなくてはいけないのか。」ということを考えて生きていた。私の人生、「生の終止符」はいつでも打つことができるのに。その答えは、真とプラプラが教えてくれた。自分の事を大切に思ってくれている人がいる。愛してくれる人がいる。見守ってくれる人がいる。それは例えば親であったり友人であったりする。どんなに自分の事が嫌いでもそんな自分を求めてくれる人がいるなら、生きていこうと思う。生きる理由は簡単なところにあった。
反抗期だった頃の私が嫌いだったもの。「世界」と「自分」。しかし『カラフル』を読んで私の考え方は変わった。まず私の「世界」を少し愛せるようになった。なぜなら「世界」は必ずしも真っ暗闇で黒色だけではないと分かったからだ。確かにぱっと見ると、黒色のように見えるかもしれない。だが、目をこらせばそこには様々な色が混ざっているのだということに気がつく。私達の生きるそれぞれの「世界」はどれも「カラフル」である。だからそんな「カラフルな世界」を楽しんで生きたいと思った。そして私は「自分」のことも、大嫌いではなくなった。今も自分自身に憤りを感じることはある。しかし、誰かから愛される自分を自分で否定するのではなく、自分の良さも悪さも含めて全てを認めていこうと思う。
「世界」を愛せる。「自分」を愛せる。「生きることの苦しみ」に立ち向かう準備が出来たとき、私はプラプラが真に贈った、ある言葉を思い出していた。
あなたはあの世界にいなければならない。この言葉は再挑戦に成功して、プラプラのサポートが必要ではなくなった真と、プラプラの別れの場面のプラプラの言葉である。真に、真の「世界」の中で力強く生きてほしいという願いが込められているように思う。
『カラフル』の本文内に二人の別れの後の話は何も書かれていない。だが真ならばきっと精一杯に生きているだろう。
わたしはこの世界にいなければならない。
カラフルな世界の中で私も懸命に生きよう。

引用元:[第32回全国高校生読書体験記コンクール]
本の詳細:[カラフル]

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