『注文の多い料理店』part3 (約1200字)

宮沢賢治 注文の多い料理店

作者:宮沢賢治
出版:新潮社

「風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、
木はごとんごとんと鳴りました。」
この情景描写を読んだとき、まるで、自分が道に迷った青年紳士に
なったかのような錯覚を感じました。
狩りをするために森へ入った青年紳士の2人は、この風音を聞いてから、
幻想の世界へ入り込んでいきます。
この描写は、人間が支配できない「自然」の世界へ、
主人公の2人が誘われていく重要な転換を表現しています。

私は、小さい頃から自然が沢山ある環境で育ったので、
風が鳴らす木々の音や、森の雰囲気などを肌で感じてきました。
それに、賢治がよく登場人物にする動物たちも身近にいました。
可愛い動物もいますが、熊のように人間を襲ってくる生物もいます。
そのため、この作品のように、山猫が人間を食べようとしたり、
人間よりも強くて厳しい「自然」が表現されていると、とても惹きつけられるのです。

この物語は、少し恐いけど、愛嬌のある表現が特徴です。
道に迷って、お腹が減った青年紳士達は、レストランに入って
食事をしようとします。
しかし、レストランの方からの注文に応えている内に、遂には
自分達が食べられる側だという事に気づきます。
クライマックスでは、山猫たちが人間を食べようと、今か今かと待っています。
中々、最後の扉を開けない紳士2人に山猫は語りかけます。
「早くいらっしゃい。親方がもうナフキンをかけて、ナイフをもって、
舌なめずりして、お客さま方を待っていられます。」
人間の私は、どうしても紳士2人の視点で読むので、
山猫の語りかける言葉が恐かったです。
それでも、どこか可愛げのある表現をしているので、楽しくも感じていました。
結局、この2人は自分達が飼っていた犬に命を救われます。
自分より下だと思っていた動物に襲われ、同じ動物に命を救われたのです。
私は、この物語を読んだ時、賢治が人間も動物も自然も、
対等な命なんだと言っているように思いました。
それと言うのも、私も動物や自然は、人間が支配する物だと考えていたからです。
ペットで可愛がったりするのも、動物を人間より下だという感覚があるから
のように感じます。

それに、雨が降れば気分が滅入るし、晴れていれば機嫌が良くなったりと、
自然に対しても人間側の視点ばかりで判断をしていました。
そもそも、動物も自然もコントロールできるという考えが、とても傲慢だったのです。
しかし、現代は、大体の事が人間の都合で片付けられていきます。
思い通りになる事のほうが多いのです。だから、私は、この物語を読むことで、
自分が自然や動物に対して、とても傲慢だったと気付きました。
傲慢だったと気付いたと同時に、私の身近にある自然が、
いかに有難いかという事も実感しました。
私たちの毎日は、自然と動物と人間が、上手にバランスをとっているからこそ、
平穏であったのです。
そんな奇跡のようなバランスを保っている毎日に、感謝して
生きて行けるようになりました。
それから、もっと自然や動物の世界を理解できるようにもなっていきたいです。

引用元:[http://book-report-no1.com/2016/05/04/chumonnoooi-kansou/]
本の詳細:[http://www.shinchosha.co.jp/book/109206/]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA