『夜のピクニック 』part5 (約1200字)

メディア化作品(映画) 夜のピクニック (新潮文庫)

 

作者:恩田陸

出版:新潮文庫

 

大人になって「学生時代の思い出は何か。」と聞かれた時、一体何を思い出すだろう。中学生活まっただ中の私でもそう聞かれるとぱっと思い浮かぶものはあまりない。よく「近すぎるものははっきりその価値が分らない」と言われるが、ついこの間、友人との会話の中で「小学校の頃の思い出って何かある?」という質問が出た。まさに冒頭に出たような質問である。たった二年前のことであるにも関わらず、私は何も思い浮かばなかった。6年間、仲間たちと過ごした日々を少しの期間で忘れてしまったのだ。だから、この本を読んだ時、無性にこの主人公達が羨ましく思えた。

話しの内容は簡単に言えばただ“歩く” ものである。何か大きな事件が起きるわけでも、ドラマのような激しい恋愛があるわけでもない。高校生たちがひたすら“歩く”という行為の中で友人との会話、広がる景色から何かが思い出され、学び、成長していく。誰もが経験したことがあるような小さなことから、大切なことを見い出す。それは人の何げない優しさであったり、悲しみであったり、また心の温もりである。そういう面でこの本はとても読み心地が良く、温かい。

この本の主要人物の一人であるが、榊杏奈という人物がいる。この少女は、話の中では留学しており一度も登場することはないのだが主人公二人の回想の中で盛んに登場する。それだけこの少女の存在には意味がある。陽気で賢い彼女は物語の中で何度も同じ台詞を口にする。「みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。」という台詞はこの物語におけるテーマ、キーワードであり、最大の謎である。歩く、という普段私たちが当然のようにしていることがどうしてこんなにも大変で、難しくて、凄いことなのだろう。体育祭や合唱祭のような大きなイベントではないが、この、みんなで“歩いた”という経験を彼女たちはずっと忘れないと思う。思い出となって彼女たちの心の中でずっと消えずに残っていくのだろう。何をしたかは忘れていってもそれが「楽しかった」という結果は刻まれ、失われることはないのだ。それだけで十分なのではないか。共に過ごした時間は、今もなお存在している。

私は、この文の冒頭部分で小学校の頃の思い出について問われた時、答えることができなかったと書いた。最初はそのことをなんだか空しく思った。だが、「よく覚えてないけど、楽しかったなあ。」と、そう答えられるだけで昔の私が経験した沢山のできごとは、今の私の中で生き続け、絶えることはない、と思えるようになった。だからもし私が大人になった時、「学生時代の思い出は何か。」と間かれたら「学生だった時のすべてが楽しかった。すべて思い出だ。」と胸を張って言えるようになりたい。そして将来、そう言うためにも、中学校の仲間たちと、精一杯、楽しく過ごして、沢山の思い出を作っていきたい。


引用元:[読書感想文コンクール 中学生の部]

本の詳細:[夜のピクニック]

 

 

 

 

↓↓↓↓↓購入はこちら↓↓↓↓↓↓

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

夜のピクニック (新潮文庫) [ 恩田陸 ]
価格:766円(税込、送料無料) (2018/1/7時点)

↓↓↓電子書籍はこちら↓↓↓↓
(初めての方は1冊無料キャンペーン中)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA