『チェルノブイリから広島へ』part1(約1900字)

チェルノブイリから広島へ

作者:広河 隆一
出版:岩波書店

「チェルノブイリ原発事故」と聞いて、すぐに何のことか分かる人は、恐らく今、日本の若者の中にはあまりいないと思います。
私がこの事故について初めて知ったのは中学一年の時で、この事故の再現ドラマがテレビで放送されていました。しかし、私はその時この話はフィクションだと思い込んでいました。あまりにも現実離れした話の内容だったからです。そして、私は最近になってこの「チェルノブイリから広島へ」の本を読み、以前見たテレビの話が実話だったことを知りました。その時は本当に、心の底から驚きました。
「チェルノブイリ原発事故」とは、一九八六年四月二六日未明に、旧ソビエト、現在のウクライナで起こった、史上最悪の原子力事故です。原子炉の爆発によって、広範囲に大量の放射性物質が放出されました。この量は広島に投下された原子爆弾による放出量のおよそ五百倍とも言われています。政府の対応が遅れたために、一般市民もこの大量の放射能を浴びてしまいました。しかしながら事故による死者は、この本が書かれた一九九六年の時点で、公式に認められ発表されたのはたったの三十一人です。事故から十年後ですら正確な数が公表されていなかったのです。実際には、その何十倍、何百倍の尊い命が失われたと言われています。事故の原因は原子炉の動作実験が行われた際、作業員の不適切な対応があったためと考えられていますが、未だに真実は分かっていません。二十年経った今でも、被害や原因などはっきりとしていない部分が多いのです。
この本では筆者が実際に現地へ行って体験したことをもとに、被災地の現状やそこで暮らす人々のことも取り上げられていました。現地では、学校は荒れ果て、教会は机や棚など、金目のものは全て盗まれていたそうです。盗まれたものは都会に売りとばされ、何も知らずにそれらを買った人々は、その大量の放射能を帯びた机などを使って生活していきます。あり得ないことの様ですが、本当にある話です。被災地の人々は避難しましたが、お年寄りは住むところが無く、結局被災地へ戻って、危険と知っていながらも生活している人が未だにたくさんいるそうです。
この本を読み、あまりにも悲惨な現実を知って、私は絶望しました。広島や長崎の原爆については学校でも教えられ、こんなにも酷いことがあったのだなと思っていました。だからこそ、それの五百倍の放射能を浴びたというのは、到底考えられないことでした。
一九四五年に広島と長崎に原爆が投下されてから、この本が書かれた時は五十年、そして今年は七十二年*¹が経ちました。広島と長崎の原爆については、日本人なら誰もが知っていると思います。しかし、チェルノブイリ原発事故については、その時ニュースで知った大人はともかく、私たち若い世代は知らない人が結構いると思います。たとえ他国のことであっても、このようなことは原爆と同様にもっと若い世代に伝えていくべきではないかと思います。「原爆はあってはならない危険なもの、原発は便利で安全なもの」と考える人もいるかもしれませんが、原子爆弾と原子力発電は使い方こそ違うものの、どちらも同じくらい危険なのです。
最近では、北朝鮮の核実験が問題になっています。核を使って周りの国に自国の力を見せ付け、圧力をかけています。こんなことがある今の世の中だからこそ、これからを担う私たちの世代が、広島と長崎の原爆だけでなくチェルノブイリ原発事故についても理解を深め、改めて核の問題に取り組むことが大切になると思います。日本には原子力発電所がかなりたくさんあるため、核問題は日本人が今考えるべき重大なテーマではないかと私は考えています。
この本の筆者は、本の最後にこう締めくくっています。
「核全体の問題と、人類の直面している課題を、見つめ直すことが必要です。そうでないと私たちは、後世に荒廃した地球を残すことになりかねないのです。そしてだれにもそんなことを許す権限はないのです。」
正にその通りだと思いました。チェルノブイリ原発事故の被災地は、人が住めるようになるにはあと六百年かかるとも言われています。その一時のミスで、六百年後までその土地やそこに住んでいた人たちの未来を汚してしまったのです。事故が起こってからでは手遅れです。それを防ぐためには、私たちが過去の事実や今この地球上で起こっている問題を知り、改善していかなければなりません。つまり、まずは知ることから始まるのです。
私はこの本を読んで、得られたことがたくさんありました。だから今度は私が、自分が得たものを周りの人々に伝え、少しでも多くの人に知っていってもらいたいと思います。

※1 . 2017年6月現在の為、修正の必要性を確認してください。

引用元:[読書感想文・税に関する作文]
本の詳細:[チェルノブイリから広島へ]

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