『坊ちゃん』part2 (約900字)

坊ちゃん(青空文庫) 夏目漱石

作者:夏目漱石
出版:
青空文庫

 作者自身の松山中学校時代の体験をもとに書かれたという。全篇を通して一人称で書かれていることもあり、氏名すらうかがい知ることのできない「坊っちゃん」。そして、これが江戸っ子の気風というのか、下女の清が「真っすぐで好いご気性だ」と言うとおり、竹を割ったような性格と無欲恬淡さには驚かされる。
 一般には、痛快な正義漢の活躍として評価されるものの、一方ではあまりの傍若無人、直情径行、思慮や情愛のなさに、暗鬱な思いがしないではない。とくに親子の間、そして兄弟間の情愛などはみじんも感じられず、坊っちゃんの性格がああだったからそうなったのか、家族間がそうだったからああなったのかは分からないが、とても寒々とした思いがする。
 
彼の協調性のなさもそういうところから来ているのか、周りにいたら大変困惑する人物だ。彼のようなふるまいは、一匹狼的な人間の集団では存在感を示すことはできようが、ふつうの組織の中では害悪以外の何ものでもない。
 
無欲恬淡さも、裏を返せば行き当たりばったりで意欲や気概のなさに通ずる。とくに「どうせきらいなものなら何をやっても同じことだと思ったが、幸い物理学校の前を通りかかったら生徒募集の広告が出ていたから、何も縁だと思って規則書をもらってすぐ入学の手続きをしてしまった」という話や、「卒業してから八日目に校長が呼びにきたから、何か用だろうと思って、出かけていったら、四国辺りのある中学校で数学の教師がいる。月給は四十円だが、行ってはどうだという相談である。おれは三年間学問はしたが実を言うと教師になる気も、田舎へ行く考えも何もなかった。もっとも教師以外に何をしようというあてもなかったから、この相談を受けた時、行きましょうと即席に返事をした」などという話は、生き方の指針すら持っていない証しであり、このような人間が教師になるなど言語道断だ。実際、教育に熱を入れたようすもない。
 それから、子供のころからずっと可愛がってくれた清に対して、どうにも冷たすぎる。まだ封建時代の名残をとどめていた時代だから、あれで普通なのかもしれないが、何ともやりきれない。しかし、清の存在だけは、この作品を読んでいて、ふっと心を和ませてくれる。

引用元:[がんばれ中学受験生!]
本の詳細:[坊っちゃん]

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