『人間失格』part5 (約950字)

人間失格 太宰治

作者:太宰治
出版:
青空文庫

 

僕がこの本を読もうと思ったのは、「人間失格」というタイトルに強い印象を受けたとともに今の自分に必要な何かを得られるのではない かと感じたからです。

 

この作品は、第一の手記、第二の手記、第三 の手記に分かれているのですが、僕は第一の手記で主人公の残した一言に強い印象を受けました。その一言「恥の多い生涯を送ってきました」はあまりにも寂しく、そして哀しくも感じられました。この主人公は隣人とほとんど会話ができず、何をどう言ったらいいのか分からないのです。そして主人公は道化をするようになり、ついには家の中でも道化をし別の自分を演じて しまうようになったのです。このことを想像してみると、それはとても苦しく、孤独を感じる のではないかと思います。

 

この作品の主人公は、そのように道化をする ことで周囲の人を楽しませ、そして、その自分への偽りを人一倍、自覚している寂しい人間です。そして主人公はこういったことをまるで悪 のように書いているのです。言い争いも自己弁解もできず、人から悪く言われても自分がひどい思いちがいをしているように感じ、内心、狂うほどの恐怖を感じているのです。僕はこういったことから、ひどい寂しさや哀しさを感じ ました。主人公が金もあり、頭もよく、容姿もよく、全てに恵まれていたことから、道化をすることがよけいに哀しく感じられました。しかし、そういった道化をすることが本当に悪いことなのでしょうか。

 

他人の心が分からない、人を心から愛せない と、書いてありますが、それはきっと主人公に道化をさせるような人間社会があったからだと 思います。それにより、主人公の本当の気持ち がおさえつけられているのではないかと、僕は 感じました。誰も信用できないから、道化を演じて本当の自分を守っているようにも感じられ ます。他人との付き合いがうまくいかず、裏表 の性格をもってしまったのだと思います。

 

しかし、この主人公のように別の自分を演じ て生活している人はたくさんいると思います。僕はこの本を読んで、この主人公が「人間失格」ではなくて「人間そのもの」のように感じられました。人間はある程度、自分に偽りをもって生きており、それは自覚してはいけないのだと僕は思います。そしてこの主人公は、現代を生きる人間の姿だということが感じられました。

引用元:[平成二十二年度読書感想文コンクール作品集]
本の詳細:[人間失格]

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